無許可で運搬するとどうなる?知っておきたい罰則とリスク

「他社から出た産業廃棄物を、ついでに自社のトラックで運んだだけ」「知り合いの業者を手伝っただけ」
このような行為は、たとえ善意からであったとしても、廃棄物処理法に違反する「無許可営業」にあたります。
産業廃棄物の収集運搬は、環境保全とコンプライアンスに関わる重要な事業です。許可なく運搬した場合、あなたの会社が直面する致命的な罰則とリスクについて、行政書士として警鐘を鳴らします。


1. 無許可運搬が招く「罰則」の全貌

産業廃棄物収集運搬業の許可は、国や自治体が定める厳しい基準(運搬車両、施設の確保、経理的基礎など)をクリアして初めて得られるものです。これを無視し、無許可で営業を行った場合、廃棄物処理法に基づき、極めて重い罰則が適用されます。

1-1. 個人・法人に科せられる「拘禁刑」と「罰金」

無許可営業を行った場合、個人だけでなく法人に対しても、以下の刑事罰が科せられます。

対象罰則の内容
行為者(個人)5年以下の拘禁刑 または 1,000万円以下の罰金
法人3億円以下の罰金

特に法人の場合の3億円以下の罰金は、会社の存続を脅かすレベルの経済的なダメージです。
これは「許可の取り消し」といった行政処分ではなく、「懲役刑」を含む刑事罰であり、前科がつくことを意味します。

1-2. 許可の「欠格要件」となり、許可が取れない可能性

廃棄物処理法に違反し罰則を受けた場合、その行為者や法人は、一定期間(通常5年間)、「欠格要件」に該当します。
欠格要件に該当すると、その期間中は、新規の許可申請や、現在持っている他の自治体の許可更新ができなくなります。
つまり、一度の違反行為が原因で、産業廃棄物関連のビジネスから完全に撤退せざるを得ない状況に追い込まれてしまうのです。

1-3. 逮捕・書類送検による社会的信用の失墜

刑事罰の適用には、警察による捜査(逮捕・家宅捜索)や書類送検が伴います。
この事実が報道やインターネットで拡散されれば、社会的信用は完全に失墜します。

  • 既存顧客との取引停止: コンプライアンスを重視する大企業や官公庁との取引は、即座に打ち切られます。
  • 金融機関からの融資停止: 銀行からの信用を失い、事業資金の調達が困難になります。
  • 従業員の離職: 会社の将来への不安から、優秀な人材の流出を招きます。

2. 「排出事業者責任」も追及されるリスク

無許可の運搬業者を利用した場合、罰則を科せられるのは運搬業者だけではありません。依頼した側(排出事業者)にも責任が及びます。

2-1. 排出事業者も連帯責任を負う

産業廃棄物を排出した事業者は、「自らが排出した廃棄物が、最終処分まで適正に行われること」に対する「排出事業者責任」を負っています。
無許可業者に依頼し、その業者が不法投棄などの不適正処理を行った場合、排出事業者も以下の責任を問われます。

  1. 措置命令の対象: 運搬業者が見つからなかったり、対応できなかったりした場合、排出事業者が原状回復(不法投棄された廃棄物の撤去・処分)の費用を全額負担するよう行政から命じられます。
  2. 行政指導・罰則の対象: 業者選定の義務を怠ったとして、排出事業者に対しても改善命令や罰金が科せられる可能性があります。

2-2. 「知らなかった」では通用しない

「まさか無許可だとは思わなかった」という言い訳は通用しません。排出事業者には、運搬業者が有効な許可証を持っているか、運搬を依頼する品目やエリアが許可内容に含まれているかを、契約前に確認する義務があるからです。
無許可業者を利用すること=あなたの会社のリスクを高めることに他なりません。


3. なぜ「ちょっとした運搬」でも許可が必要なのか?

3-1. 「有償」であればすべてNG

家族や自社施設への運搬など、ごく限定的なケースを除き、他社の廃棄物を運搬して対価(運賃)を受け取った場合は、金額の多寡にかかわらず「業として」行ったと見なされ、許可が必要です。
たとえ運賃を請求しなくても、「処分費用に含めて請求した」「別のサービスを割引した」といった行為も、実質的に有償と見なされる可能性があります。

3-2. 環境リスクを排除するための公的な仕組み

許可制度は、運搬中に廃棄物が飛散・流出しないための運搬方法の基準や、廃棄物処理に関する専門知識を持つための講習会受講の義務などを定めています。
これらをすべてクリアし、国から「適正に運搬できる能力がある」と認められたのが「許可業者」です。無許可業者は、こうした環境リスクを回避する公的な仕組みの外で事業を行っていることになります。


4. 会社をリスクに晒さないために

無許可運搬は、一見すると手間や費用を省ける近道に見えますが、その代償は会社の存続に関わるほど甚大です。
「面倒な手続き」ではなく、「事業を守るための生命線」として、許可取得を最優先で行うべきです。

まずは専門の行政書士にご相談ください

当事務所では、複雑な産業廃棄物収集運搬業許可申請を専門としており、お客様を無許可営業のリスクからお守りします。

  • 自社が運搬しようとしている廃棄物が許可対象かどうかの判断
  • 必要な許可エリアの確認
  • 厳しい欠格要件のチェック

これらの初歩的な疑問から、許可取得後のコンプライアンス維持まで、トータルでサポートいたします。
事業の安定と発展のためにも、今すぐご相談ください。

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この記事を書いた人

行政書士古川俊輔
行政書士古川俊輔
産業廃棄物許可専門の行政書士
埼玉県で地域密着対応
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